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2013年6月28日up

方天画戟に青龍刀…。好漢たちの愛用武器(水滸伝と三国志 1)

個性的な好漢たちが、たくさん登場する「水滸伝」。その好漢たちが使う武器も、また実に個性的でバラエティ豊かである。たとえば108星の中で最初に登場する史進は、最初は棒の稽古をしているが、その最中に「武芸十八般」の達人である王進に出会い、さまざまな武器や武術を教わることになる。

王進がマスターしていた「武芸十八般」とは、18種類の武器を操る武術のこと。「水滸伝」では「矛・鎚・弓・弩・銃・鞭・簡・剣・鏈・杁・斧・鉞・戈・戟・牌・棒・槍・杈」とされている。

鎚(つい)は、錘(すい)とも呼ばれるハンマーのような打撃武器で、湯隆や樊瑞が使用する。弩(いしゆみ)はいわゆるボウガンで、燕青が使う。鏈(くさり)は鉄製の多節棍で、呉用や鄧飛が使う。牌は団牌・変牌とよばれる盾で、李袞と項充がその裏に武器を忍ばせる。杈(さすまた)はフォークのような形の武具で解珍・解宝兄弟が使うなど、それぞれが色々な場面で登場する。

両サイドに並ぶ18種類の武器


18種の中で、ある意味中国らしいというか特徴的な武器といえば、戟(げき)だろう。突き刺すこと、斬ること両方に長けた武器で、「水滸伝」では呂方が「方天画戟」を使う。この武器は「三国志演義」にも後漢最強の武将・呂布の愛用武器として登場する。呂方は呂布に傾倒しているという設定なので、武器も呂布と同じものを選んだというわけである。

「鞭」(むち・べん)もユニークである。これは囚人を打つような紐状の武器ではなく、鉄や銅などの固い物質でできた棒状のものだ。「水滸伝」では「双鞭」(そうべん)のあだ名で知られる呼延灼が2本使って戦うが、「三国志演義」でも黄蓋(こうがい。赤壁の戦いなどで活躍)が「鉄鞭」という武器を用いている。鉄鞭も双鞭も「ぶん殴る」タイプの武器で、敵兵の身になって考えると、斬られたり刺されたりするのも痛そうだが、鞭で撲殺されるのもまた実に痛そうだ。

「三国志演義」から「水滸伝」に流用された武器は、他にも色々ある。有名なのが、青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)という、関羽が愛用した薙刀(なぎなた)に似た形状の大刀だ。重さは82斤(約18キロ)もあった。これは言うまでもなく、関羽の子孫である関勝の武器として「水滸伝」には登場する。

左/関羽・関勝が使った青龍偃月刀(洛陽・関林) 右/張飛・林冲が使った蛇矛(洛陽・関林の五虎殿)共に筆者撮影


また、林冲が使う蛇矛(じゃぼう)は、「三国志演義」では張飛が使う武器である。外見上は通常の矛と同じだが、刃先の部分が蛇のようにくねくね曲がっていて殺傷力を高めたもので、長さは4mほどもあった。

しかし、残念ながら方天画戟、青龍偃月刀は宋代(12世紀)以降、蛇矛は明(14世紀)の時代に登場した武器で、「三国志演義」の時代(3世紀)には無かった。そのため、「正史・三国志」には、これらを呂布や関羽、張飛が使っていたという記録もない。「三国志演義」や「水滸伝」が成立した明の時代に、後付けされた設定なのである。ただ、フィクションながら武器を通して「水滸伝」と「三国志演義」の関連性を探ってみるのはとても興味深い。

その他、青面獣・楊志が持っている吹毛剣(すいもうけん)、方臘配下の将軍・石宝が持つ劈風刀(へきふうとう)、魯智深の62斤の禅杖、徐寧の鈎鎌鎗(こうれんそう)など、「水滸伝」に登場する武器はどこか不思議で、ちょっと気になるようなユニークなネーミングをしている。

魯智深の武器・禅杖


最近発売されたドラマ「新・水滸伝」でも色々な武器が実写化されているが、それを見ると自分がイメージしていたものと比較できて面白い。イメージに近いこともあれば、そのギャップに驚くこともある。そういう楽しみ方も、水滸伝の魅力といえよう。

文・上永哲矢〈哲舟〉