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2013年7月12日

「天保水滸伝」ゆかりの地・千葉県香取郡に行く

「天保水滸伝」の登場人物である笹川繁蔵、平手酒造、勢力富五郎という笹川一家三人衆の墓や碑がある延命寺

「水滸伝」は中国大衆文化の代表格だが、江戸時代などに日本の大衆文化・娯楽にも強く影響したことは有名。江戸の天保の時代を舞台にした浪曲や講談で人気の「天保水滸伝」も、その好例と言える。そこで編集部では、「天保水滸伝」ゆかりの地・千葉県香取郡にある東庄町(とうのしょうまち)へ。東庄が舞台の笹川繁蔵と飯岡助五郎、ふたりの侠客の勢力争いの物語である「天保水滸伝」とは? そして“水滸伝”と冠する理由とは? 東庄町観光ガイドの会 会長・勝野暢一さんにガイドをお願いした。

「天保水滸伝」のベースとなった物語の舞台は、大飢饉などで社会不安が増大した天保の時代(1830~44年)。侠客・笹川繁蔵と飯岡助五郎の確執が緊迫した後、“大利根川の決闘”という紛争に発展。笹川一家に軍配は上がったものの、やがて繁蔵は助五郎の子分の闇討ちに遭い、通称ビヤク橋にて絶命してしまう。そこで親分の仇討を誓った勢力富五郎だったが、関東取締出役と飯岡一家に追われ、金毘羅山に逃げ込み…。「勢力富五郎は52日間、捕まらなかったそうです。金毘羅山に立てこもって、幕府にたてついたわけですが、この様が梁山泊を舞台にした『水滸伝』と似ていたとされています。本家とは、スケールが違いますがね(笑)」と勝野会長は語り、「その後、時代が変わって嘉永三年、1850年に江戸の講釈師である宝井琴凌という人がここを訪れた時に、“大利根川の決闘”のことを調べ、講談として世の中に発表しました。その時に“水滸伝”というタイトルだったので、それが『天保水滸伝』の始まりになります」と続けた。宝井が“水滸伝”を引用した背景には、勢力富五郎が金毘羅山に立てこもったことだけでなく、“大利根川の決闘”で小勢力の笹川一家が幕府の後ろ盾もある飯岡一家を破ったことにも由来しているとか。現地を訪れれば、勝野会長を筆頭に“東庄町観光ガイドの会”から詳しいガイドを聞くことができる。

天保水滸伝遺品館

というわけでまず訪ねた場所は、JR笹川駅徒歩5分の地にある天保水滸伝遺品館。実は旧笹川町時代の庁舎跡を改造した建物の一部で、まるで映画のセットのようなノスタルジックな雰囲気が楽しめる建物だ。ここでは笹川繁蔵が愛用したというキセルや三度笠、用心棒だった平手造酒愛用の徳利、一の子分の勢力富五郎が所持したという槍など、当時の好漢、いや刺客たちの遺品などを展示している。それほど遠い時代の遺品ではないので、どこか生々しい様子がリアルな印象を受ける。「たとえば繁蔵さんたちが使っていたという御膳を例にあげてみても、繁蔵さんが使った御膳とほかの人が使った御膳は、質が違いますね。この並びだけを見ても、当時の人間模様が伝わるようです」という勝野会長。

ちなみに勝野会長たちがスタンバイしている旧笹川町庁舎内には、「天保水滸伝」ゆかりのグッズが数多く展示してある。46回も映画になっているという「天保水滸伝」の宣伝用ポスターや、いわゆる“大利根もの”で有名な国民的歌手・三波春夫が天保水滸伝記念祭に寄せた特別な詩、変わったアイテムとしては笹川繁蔵も登場する侠客の番付表なども。最近の映画である『鈍獣』(09)のチラシを見かけて聞いていると、「今放送中の『あまちゃん』の宮藤官九郎さんが脚本を書いた映画でした。相撲のシーンがあるということで、ロケで土俵をお貸ししました」。相撲については後述するが、映画などの娯楽文化と深い縁がある東庄町は、「水滸伝」のスピリットの影響を確実に受け続けている土地柄のようだ。

(左上から時計まわりに)笹川繁蔵が使用していた御膳とほかの人が使用していた御膳/「天保水滸伝」の映画ポスター/歌川豊国による浮世絵/笹川繁蔵も登場する侠客の番付表

続いて、天保水滸伝遺品館から徒歩圏内にある延命寺へ。ここには、笹川繁蔵、平手酒造、勢力富五郎という笹川一家三人衆の墓や碑がある。「“大利根川の決闘”の笹川勢と飯岡勢の乱闘は、この近辺と利根の河原にかけて起こったそうです。笹川繁蔵、平手酒造、勢力富五郎の墓や碑は建立の年代が違いますが、延命寺がもっともふさわしいということで一緒に祀っている、というわけですね」。ちなみに、手前にはすごろくをかたどった勝負石も。この石に触れた者は負け知らずというパワースポットとしても人気だそうだ。

帰路の途中、天保水滸伝遺品館がある諏訪大神の奥にある土俵も拝見した。これが前述の『鈍獣』(09)ロケで使った土俵で、もともとは飢饉で困窮する農民を救済するために、繁蔵が花会や奉納相撲を開くために作ったそうだ。諏訪大神には、相撲の神様として有名な野見宿禰命(のみのすくねのみこと)の碑もある。勝野会長は、「7月に開催する笹川の相撲祭りは、夏の風物詩として有名です。8月には出羽海部屋の夏合宿で使っています」とも。笹川繁蔵ゆかりの奉納相撲は、毎年恒例の夏のビッグイベントになっているようだ。

繁蔵が花会や奉納相撲を開くために作った土俵は、現在、出羽海部屋が使用しているため、日本相撲協会の規定にあわせ、新たな土俵に様変わりしている

このほかにも「天保水滸伝」ゆかりのおみやげが手に入る「菓心 あづき庵」、笹川繁蔵の一族である岩瀬七右衛門家代々の墓がある「西福院」など、いくつもの名所が徒歩圏内にある。来たる夏休み、「天保水滸伝」めぐりを計画してみてはどうだろうか? ちなみに編集部が今度おじゃまする際には、今回お休みで行けなかった「水滸亭」というレストランに寄ろうと思っている。

◆東庄町観光ガイドの会
火・水・土・日 10時~15時
問合せ:0478-86-6075(東庄町役場内観光協会)

取材・文・写真:鴇田 崇

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