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2013年9月6日

京劇俳優でただひとりの日本人! 石山雄太氏に聞く京劇と「水滸伝」の魅力

京劇俳優の石山雄太氏

以前、日本を拠点に中国伝統芸能たる京劇の普及活動をしている在日の京劇団「新潮劇院」主宰で京劇俳優の・張春祥氏のインタビューをご紹介したが、本場中国の京劇界で活躍する日本人もいた! その人とは、京劇界唯一の外国人俳優として日中両国で活動中の石山雄太氏で、張氏同様、京劇「水滸伝」で好漢を演じて、日本公演も成功に導いた日中文化交流の功労者だ。そこで「月刊水滸伝」では日本に帰国中の石山氏にお会いして、そもそも京劇俳優を目指した理由や、京劇「水滸伝」の話をインタビューでうかがった。

今回の登場ゲストである石山雄太氏は、京劇界初の外国人京劇俳優として中国文化部直属の中国国家京劇院に所属する京劇俳優で、生まれは東京の浅草。京劇に興味を抱いた時期は、小学校の低学年にまでさかのぼる。「テレビで初めて京劇を観まして、それが「西遊記」ものでしたかね。そこにアニメやゲームにはない魅力を感じて、強烈に心に残ったわけです」。やがて孫悟空を演じる役者になりたい想いが日増しに強くなり、中国語を勉強するなど現地に行く準備を始め、10代の後半に、京劇界の門戸を叩く。「出来る限りの準備をした後に、向こうの京劇学校の存在を知り、北京にある中国戯曲学院を受験しました。合格後、8年間京劇を勉強しましたが、一クラスが一劇団みたいなイメージですね。そこで演技を磨いて、卒業後、即戦力になるように修業します」。

石山氏は2001年の卒業後、すぐにプロの俳優に。現在10年目だが、日本人の京劇俳優は、ただひとり。「そうですね。後にも先にも私だけです」。ちなみに活動の拠点は中国と日本の両方で、日本でも文化交流の活動をしているという。「まるで燕青のごとく、自由気ままに移動していますよ(笑)」。

中国国家京劇院公演「新作水滸伝」(2009年)  MIN-ON

その石山氏、京劇では憧憬の的だった孫悟空をしばしば演じているが、京劇「水滸伝」でも孫悟空のように親しみ深いキャラクターがいる。それが、鼓上蚤・時遷(こじょうそう・じせん)! 原典では陰謀による罠にハマった盧俊義(ろしゅんぎ)を助けるため、いろいろな策略を考案する、言ってみればマニアックな好漢だ。「確かに時遷は宋江や林冲などと違ってポピュラーなヒーローではないですが、とても個性が強いので実は中国でも人気が高いキャラクター。多くの好漢が象徴する、斬り合い、突き合いをするオーソドックスな戦い方が多い中で、時遷が特徴としている点は忍びと盗み。正統派とは違う方法論で勝利を収めていく。そういう個性が光っているので、それが人気の理由です」。

その時遷の最大の見せ場が、前述の盧俊義を救い出す“刑場荒らし”の名場面だ。「梁山泊の面々を芸人や物売りに変装させて、処刑場の前に集めます。処刑の時刻になった瞬間、仮面を剥がして刑場を荒らして盧俊義を救い出す。『水滸伝』の中でも一二を争う名場面」とうれしそうに解説する石山氏。また、最初は罪人のような時遷が、梁山泊の任務を経て変わっていく過程にも惹かれるものがあると続けた。「最初はコソ泥ですが、時遷自身も活躍の場を得て成長して、ヒーローっぽくなっていく。演じていても、そこにグッときますよね(笑)」と感情移入する。

真ん中が石山雄太氏/中国国家京劇院公演「新作水滸伝」(2009年)  MIN-ON

この京劇「水滸伝」の日本公演も以前に大成功を収め、石山氏は日中間の文化の架け橋役を担っていると言っても過言ではない存在だ。普段拠点としている北京では中国文化の発展に寄与する日本人として高く評価され、中国中央テレビの人気番組「孫悟空コンテスト」では15強に選ばれたことも! ゆえに、肩身が狭い思いをしたことは一度もないという。「そもそも、あれだけの広大な国土と文化を持っている国なので、基本的に何でも受け入れようとするお国柄です。日本と違って単一民族ではなく、56の民族が暮らしているので、実は懐が広いなと感じることが多いですね。僕が劇団(中国国家京劇院)に入る時、当時の院長がおっしゃったことは、京劇はいろいろなものを受け入れて、今日まで発展を続けている芸術。だから外国人であっても正しく力を注げるものであれば、いくらでも受け入れると。この言葉は心に残っていますよね」。それが活動の原動力になっている。

そして、以前インタビューした張春祥氏と同様、石山氏も中国と日本を往来しながら、中国と日本の文化交流や中国文化の紹介活動を続けていくという。その活動の過程で、もちろん「水滸伝」にも意識を向けている。「さまざまな文化を受け入れて発展していくという意味では、まさしく『水滸伝』も京劇と同じですよね。だから、人気があるわけですよね。今後も機会をみつけては、京劇、『水滸伝』などの古典文化の発展に力を注ぐことに頑張りたいと思っております」。

取材・文・写真(石山雄太氏):鴇田 崇

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