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2015年8月7日

俳優・宇梶剛士に聞く『岳飛伝』
岳飛と秦檜。それぞれの「生きざま」をリスペクトしたい

北方謙三のオリジナル小説『岳飛伝』のファンと語る宇梶剛士

史実をもとにした、北方謙三のオリジナル小説『岳飛伝』は、『水滸伝』と『楊令伝』から続く大長編として多くの読者を虜にしている。映画・ドラマ・CMなどで大活躍の俳優、宇梶剛士(うかじ たかし)もファンのひとりだ。

――宇梶さんが岳飛という人物に触れたきっかけは?

北方謙三さんの小説です。『水滸伝』19巻と『楊令伝』15巻は、どちらも読み終わったら最初に戻って5回も読みなおしています。最初は「長いな~、読めるかな~?」と思ったんですが読み始めたら、あっという間でした。それで今は月刊誌『小説すばる』で連載中の続編『岳飛伝』を毎月リアルタイムで読んでいます。月1度の楽しみなので、読み終わってから翌月までの日々が本当に待ち遠しくて・・・(笑)。

――中国の水滸伝ゆかりの地にも行かれたそうですね。

2008年に『中国浪漫スペシャル 北方謙三の水滸伝を探る 中国縦断3000キロの旅』という番組が放送されたんですが、そのレポーターとして現地を訪ねました。北方さんが「宇梶を行かせろ」と推薦してくださったようです(笑)。梁山泊の跡や、武松が虎退治をした場所など、英雄ゆかりの地が残っているのを見て感動しました。

――北方謙三さんの小説は、そんな中国らしいスケール感に溢れていますね。

北方さんの小説は、文字が単なる文字として並んでいるのではなく生きているように見えるんです。歴史の流れの中で人間が生きて泳いでいる。僕も大人になってから色々な本を読みましたが、そのおかげで今は歴史小説が好きになりました。

――『岳飛伝』の主役である岳飛という人を、どう捉えておられますか?

とても人間らしい人ですね。迷いながらも一途に志を持って、わざわざ縛られながら人生を歩む。それが災いして酷い目に遭うこともあるんですが、危難を乗り越えて一歩一歩、大きくなっていく。僕にとっては共感しやすいです。

――ドラマ『岳飛伝』の岳飛は、ご覧になってみていかがですか?

僕が小説でイメージした岳飛像と見比べても違和感がなく、とても「いい顔」をしていますね。こうして長編ドラマの主役になっているのを見ても、「実在した偉大な英雄なんだな」と改めて実感できます。岳飛にとっては敵にあたる秦檜(しんかい)もいいですね。いかにも悪そうな顔をしていますが、よく見ると「深み」があります。


ドラマ版『岳飛伝 -THE LAST HERO-』ではアジアのスター・ホァン・シャオミンが岳飛を演じている

――中国に昔から伝わる講談などでは「悪役の秦檜」と「悲劇の英雄・岳飛」という対比で語られてきましたが、このドラマの秦檜は単なる悪人ではなく、彼なりに国を想う様子も描かれています。

それはいいことですね。庶民から見れば岳飛が英雄、秦檜は悪人と見るのが分かりやすいですから、その見方も有りだと思います。ただ秦檜にしても、金国の兀朮(うじゅ)にしても、それぞれに正義や道理があって生きていたわけですから。秦檜は南宋の宰相として彼なりの方法、つまり外交で国を救おうとしていた人です。しかし、岳飛は戦いに活路を見出そうとした。そこで2人は対立するわけですが、これはどちらが善でも悪でもないと思います。

――国の存亡がかかっていたという状況もありますが、懸命に生きていましたよね。

約1000年前の中国、そこには異民族との戦争という、あまりにも過酷な状況が目の前にありました。これを打破するには戦いに身を投じるだけでなく、交渉という手段もあった。そう考えると、秦檜は今の僕たち日本人の考えに近いのかもしれません。岳飛と秦檜、それぞれの“生きざま”、どちらもリスペクトしたいです。


岳飛とは敵対関係にあった秦檜

――戦乱の時代を知ることは、現代を考える機会にもなりますね。

僕は8月15日生まれ。日本の「終戦の日」に生まれたので、小さい頃から戦争というものを考えることが多かったように思います。だから真剣に考えてしまうんですよね。宋の時代は、今とは戦争に対する考え方も価値観も全然違ったと思うけど、岳飛も秦檜も兀朮も戦争を目の前にして、それぞれの正義に向かって、ひたむきに歩んでいたはずです。未舗装のガタガタ道を馬で移動していた時代と、舗装された道を自動車で安全に移動できる時代では価値観は全然違います。でも当時を理解し、現代と比較することは「今」を考えることにつながると思います。それが歴史小説やドラマの魅力ですね。

――岳飛、秦檜、兀朮。宇梶さんが役者として演じるとしたら、誰がいいですか?

岳飛と言いたいけど、もう50歳を過ぎているから素直には言いにくいですね(笑)。でも下から這い上がる、逆境から立ち上がって歩き続ける岳飛は、気持ちを込めて演じられそう。幸い僕は身体もデカいですから。『水滸伝』では王進が好き。できるなら彼も演じてみたいです。中国の物語はスケールが大きいので、日本で制作するのは難しいかもしれませんが、大河ドラマにでもなれば面白いですよね。


取材・文:上永哲矢=歴史コラムニスト


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宇梶剛士(うかじ・たかし)
1962年、東京生まれ。『半沢直樹』、『ストロベリーナイト』、『バケモノの子』など、数々のドラマ、映画、バラエティー番組に出演。『信長のシェフ』では森可成、大河ドラマ『北条時宗』では九条頼経、『新選組!』では西郷隆盛、『平清盛』では源頼政、軍師官兵衛では清水宗治など、歴史上の偉人を演じる機会も多い。舞台の脚本・演出も手がける。


公演情報
【2015年9月2日(水)~9月6日(日) 全8回公演】
●『モーリタニアの空』(作:宇梶剛士)
会場:下北沢シアター711
チケット発売中


【2015年11月3日(火・祝)~11月10日(火)】
『南阿佐ヶ谷の母』(宇梶剛士出演)
会場:紀伊國屋ホール
チケット一般発売:9月4日(金)10:00~


【発売中】
『岳飛伝 -THE LAST HERO-』
DVD-SET1、SET2、SET3 (各5枚組/1~28話収録)
各16000円+税
※レンタルも同日より開始

【9月2日(水)リリース】
『岳飛伝 -THE LAST HERO-』
DVD-SET4 (6枚組/29~38話収録)
16000円+税
※レンタルも同日より開始

※以降、毎月リリースあり
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
提供:NBCユニバーサル・エンターテイメント/BSジャパン
『岳飛伝 -THE LAST HERO-』公式HP

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