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2013年5月1日

中国大衆文化のスペシャリスト・岡崎由美教授が「水滸伝」の魅力を分析

広く中国大衆文化の視点で「水滸伝」を知るには、スペシャリストを訪ねよう! ということで、「月刊水滸伝」編集部では早稲田大学文学学術院教授・岡崎由美先生に直撃インタビューをすることに! 数々の武侠小説の翻訳を手がけ、中国大衆文化のすべてを知り尽くす岡崎センセイが、「今年、『水滸伝』ブームが来ますよ(笑)」と大胆宣言! 中国大衆文化における「水滸伝」、そして魅力について、ガッツリと解説と分析をお願いしました!

「三国志演義」「西遊記」とともに中国3大名著のひとつとして現代でも大人気の「水滸伝」。宋江(そうこう)を首領とする一〇八人の豪傑が入れ代わり立ち代わりで官軍に挑み、バトルに身を投じる“ヒーローもの”としての魅力が「水滸伝」にはあると岡崎先生は指摘する。「一番面白いと思ったことは、歴史上の有名な人物ではない、庶民のオッサンなどが主人公たちという点です(笑)。でも、それぞれがメチャクチャ変人で、個性が強い。そして、たいがい暴れまくる(笑)。庶民の目線で紡ぐ物語なので、面白くないわけがないですよね」。

また、中国大衆文化の研究者として、「水滸伝」は最適な題材でもあると岡崎先生は言い、それは、その成り立ちに大きな理由があるという。「そもそも、中国の小説などの書籍には誰が書いたかよく分からない、作者不詳的な作品が多い(笑)。でも、それは名も知れない大衆の間から、どこからともなくドヨヨヨ~と立ち上がって、大勢の人々の文化的な背景や意思を結集して物語が生まれていくからですよね」。折り目正しいエリート的な「三国志演義」とは違い、「水滸伝」は成り立ちそのものがアウトロー的なのだ。「宋江が実際に暴れていたことは確かですが、後の人はほぼ作りモノですからね。そこがいい点ですが(笑)」。

現在我々が手にする「水滸伝」の翻訳本は現在の決定稿だが、実は物語やキャラクターの背景には「ムチャクチャな話がいっぱい存在します(笑)」という。岡崎先生は、それこそが中国大衆文化の本質で、「水滸伝」が最強に面白い物語になっている理由であると強調する。「宋代の中国の講談を調べると、もともとは時事ネタみたいなもので、初期は各ヒーローの武勇伝みたいな内容だったわけですね。たとえば、青面獣・楊志の話で一席みたいな。それが気づくと、エピソードが混ざり合って長編になっていた。要は面白いからもっと話そうじゃないか、もっと作ろうじゃないかといって発展したわけです。人々の総合的な興味・関心の結集力が、「水滸伝」という物語を作ったわけですよね。すごい天才が出て来て、後世に残る傑作説を書いたわけじゃないという。「水滸伝」は、そこが面白いですね」。

そして今年、この「水滸伝」に密かなブームが到来している可能性がある! 6月には中国ドラマの「水滸伝」がDVDで発売を迎え、5月には劇場版も公開に。さまざまな「水滸伝」作品が登場する最中、実は岡崎先生も同タイミングで、中国明代の演劇「水滸記」を江戸時代に全訳した写本を整理して刊行する予定。5年前に立ち上げたプロジェクトで、本場中国の研究者と共同で研究を進めていたという。「わたしは日本で受容する中国の演劇というテーマで研究していまして、その成果をまとめたものです。ここには晁蓋がリーダーになる場面などが登場しますよ。ファンは必見ですかね(笑)」。

もともと「水滸伝」は江戸文化に多大な影響を与え、日本人との親和性も高いストーリーだ。岡崎先生も「多くの日本人は中国との関係では経済と外交にだけ関心が向いていて、中国の文化はクールじゃないと思っていますよね。それは知らないだけで、大きな間違いです」と熱く語る。そして、願いも込めて、こう予測する! 「中国のドラマとわたしたちの研究は本当に単なる偶然のタイミングなので、びっくりしました。最近江戸時代のブームよ、もう一度っていう気もするので、「水滸伝」も来るのではないでしょうか(笑)」。

取材・文・写真:鴇田 崇

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